初めての裁判所 – 不払いクライアントに少額訴訟をおこしてみたよ – 1/2
先日、ある人からの紹介で初めてのクライアントさんからWEBサーバー構築の作業を請け負い一撃構築したのですが、一部入金はあったもののその後連絡が取れず・・・という事態になりまして。残金回収の最後の手段として、原告として弁護士を頼らず1人で少額訴訟を起こしたお話をしようかと。同じように売掛金回収でお困りの皆様にお役立ていただきたく、犯行の手口訴訟事例をナレッジとして公開します。[ref]なお、本エントリーは「ぼくの場合こうした」という事実を相手方の情報を多少ボカして公開しており、必ずしも同じフローで裁判がすすむことを意味しません。また、本エントリーを参考に訴訟を起こしたとしても、勝訴を保証するものではありません。もし法律知識に不安があったりした場合は、素直に弁護士へ依頼することをおすすめします。[/ref]
私と同じように、フリーランスでWEBに携わるエンジニアや立ち上げ後間もないベンチャーにとって、入金の遅れは死活問題です。幸い私の場合、一部入金があったので、回収対象の費用は1桁万円だったのですが、これだと弁護士に依頼するのは割に合いません。
しかし、これで泣き寝入りするのも面白くないですし、学校では教えてくれない社会勉強 [ref]社会科(公民)の時間で一応教わったのですが、たぶん教える先生も生徒であるぼくらも、刑事被告人として裁判を受ける権利くらいにしか思っていないんですよね。実際には、訴えを起こす権利、そして裁判の判決こそが唯一の拘束力であって、私刑を受けるべきものではない、という趣旨だと理解しています。[/ref] として、日本国憲法に定められた基本的人権の1つ、裁判を受ける権利を行使しようという試みも兼ねて自分1人の力で少額訴訟を起こすことにしました。 [ref]なお、ここでは割愛しますが、「金払ってくれねー!ムキー!」と瞬間湯沸し器のように訴訟をおこしたわけではなく、可能な範囲で支払いのお願いは何度もしております。[/ref]
言わば、「法廷で会おう」的な状況です。もっとも、私はヒキコモリエンジニアなので、相手方には実は1度も会ったことがないんですが。しかし、私のようなフリーランスやベンチャー、小規模な会社ですとだいたい1度は皆さんこういう目に遭っているらしく、先達の知恵というものが公開されています。
■ そもそも少額訴訟とは
裁判所WEBサイトからの引用ですが、
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1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする,特別な訴訟手続です。
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60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り,利用することができます。
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原告の言い分が認められる場合でも,分割払,支払猶予,遅延損害金免除の判決がされることがあります。
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訴訟の途中で話合いにより解決することもできます(これを「和解」といいます。)。
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判決書又は和解の内容が記載された和解調書に基づき,強制執行を申し立てることができます(少額訴訟の判決や和解調書等については,判決等をした簡易裁判所においても金銭債権(給料,預金等)に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることができます。)。
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少額訴訟判決に対する不服申立ては,異議の申立てに限られます(控訴はできません。)。
とあります。つまり、私のサーバー構築スタイルと一緒で、一撃です。泣いても笑っても。ただし、被告が通常裁判を希望すればその限りではなく、そうなると原告としては裁判にかかる人的コストなどで割に合わないこともあるでしょう。なので、「一撃で勝つ」を目標に戦う準備をしなければいけません。
■ 少額訴訟の準備 (1) 証拠集め
少額訴訟に一撃で勝つための準備、その成否は証拠集めが9割、と言っても過言ではないでしょう。裁判の当日まで相手方に会うことはないので、相手がどんな証拠を出してくるかは裁判の当日までわかりません。なので、普段から地道に証拠を整理するしかなく。もちろん、裁判とは双方の訴えを法に基づいて判断する所であって、情にほだされるべきではないので、いわゆる心理戦の準備までは必要ないと思っています。言い換えると、証拠で示せる事実こそが最大の武器、ということになるでしょう。なので、相手がどんな証拠を出してくるのだろう、と恐れる必要はないと思っています。
金銭の支払いを求める訴えをおこすわけですから、請求書はもちろんのこと、「こちらが早よ払えと言っても相手は期日までに払ってくれなかった証拠」もあったほうがよいでしょう。なので、電話の請求だけでなく、メールや時には内容証明も手段として使えます。なお、メールの場合はプリントアウトしたものが証拠になります。[ref]余談ですが、さすがにメールのヘッダ情報までは求められませんでした。[/ref]
あと、証拠書類は時系列にソートしておくのはもちろん、注目してほしい箇所は赤マーカーでアンダーライン引いたり付箋を貼っておくとよいでしょう。紙に上書きしちゃいけないものだと思って遠慮してたのですが、書記官の兄ちゃんには「いや、構いません。むしろそうしていただけると助かります。」と言われたので大丈夫です。あと、ホッチキス留めしておくか、ページの通し番号を振っておくとよいでしょう。
■ 少額訴訟の準備 (2) 訴状を書く
訴状は裁判所のサイトからダウンロードできます。が、「事件名 売買代金請求事件」の訴状をダウンロードして必要事項を記入して印刷して持ってったら、「そのフォーマット違うよ」と裁判所の案内のおじさんに言われてしまいました。(´・ω・`) しかし、後述しますが、その場で正しいフォーマットの用紙をくれて、その場で書き直すことができました。[ref]いわゆる物品を販売(サーバー機器本体納入など)ではなく、サーバー構築の作業請負の代金なので、売買代金請求事件ではないそうです。[/ref]
自分(原告)と相手方(被告)の住所氏名を書く欄以外はほとんどチェックボックスだったり金額を書くだけだったりするので、それほど手間ではありません。[ref]裁判官の心象に訴えるよう結構長めに「あいつは再三の請求にもかかわらず金はらってくれず連絡も取れない酷いムキー」なことを書いても、その場で手書きで転記するのが大変でした。普段手書きしないので。。。[/ref]
■ 少額訴訟の準備 (3) 登記事項証明書をもらってくる
裁判の当事者が法人格をもつ会社の場合、訴状と一緒にその会社の商業登記本または登記事項証明書を裁判所へ提出する必要があります。これは法務局で入手することができます。法務省のサイトによると、最寄りの登記所から他の登記所管轄の会社・法人のものを取得することもできます。
登記所の混雑度にもよりますが、私の場合、すんなり発行してくれた(少なくとも日単位で待たされることはなかった)ので、登記所→裁判所のダブルヘッダーを1日でこなしました。あ、一応書いておきますと、私も相手方も東京都内(同一都道府県内)だったからこそできた技です。
■ 少額訴訟の準備 (4) 証拠のコピーや訴訟費用
もう1つ大事な準備として、「訴状の副本(コピー)」と「証拠書類」を相手方の人数分用意することもお忘れなく。訴状は相手方x1枚ですが、証拠も相手方に送るので結構な枚数になってしまいます。東京簡易裁判所には地下にコンビニ(ファミリーマート)がありますが、コピー機は手差しで2台しかないので、自宅のプリンターで印刷するか、キンコーズなどでコピーすることをおすすめします。なお、登記事項証明書はわざわざ相手方に送るものではなく、裁判所へ提出するものなので、これはコピーする必要はありません。
ほかにも、収入印紙や訴状郵送のための切手代が必要ですが、裁判所で「いくらのを買ってくださいねー」と教えてくれますし、裁判所に併設されている売店やコンビニで、必要額ぶんがあらかじめ袋に入ったセットが売られていることもあるので、収入印紙や切手の事前準備はそれほど心配しなくてよいでしょう。印紙代と切手代をあわせるとだいたい5000円程度を見込んでおけばよいかな。
ここまでの準備を整理すると、以下の5つです。
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請求した金額だけでなく、これまで「再三請求した」という事実の証拠を集めて整理する。証拠は紙で示すことができるものがベスト。
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訴状は簡潔に書いたほうが楽。裁判所で書き直しやフルスクラッチコーディングもできる。
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相手方が法人の場合、訴状、証拠とともに商業登記本または登記事項証明書を裁判所へ提出する必要がある。
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証拠は相手方の人数分あらかじめコピーしておくこと。大量にある場合は事前準備をお忘れなく。
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訴訟費用はだいたい5000円前後。相手方が複数いれば切手代がかさむ可能性も。
続きます。
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