[読書感想文] 不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法

[読書感想文] 不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法

不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法 ( 著者:オリバー・バークマン , 高橋 璃子 (翻訳)
ナレーター:けんぞう ) の要約動画がたまたまYoutubeで紹介されていたのでAudible購入

本書の全体からは完璧主義は幻想であること、人生は予測不能であること、問題は人生に付き物であることが述べられており、著者は完璧主義を根本にして生きるのを諦めろと言っている。本書は1日一節を読みすすめ、ちょうど30日で完結する建付けになっているが、必ずしもすべてを実行する必要はないそうだ。もっとも、すべての読者がこれらを実行できるとは著者自身が思っていないとのこと。

個別の具体的なアドバイスは、個人の努力目標としてアリなこともあるのかなー、と思いつつ。確かに本書で新たな気づきを得たり、1日ずつ実践してみて自己変革にチャレンジしたりするキッカケになることもあるだろう。

中には過去の自分との向き合い方が言い当てラテて「ウッ…」となったりした箇所もあったが、繰り返し読んで(聴いて)思考の癖を変えていくという読み方は著者がもっとも期待している読まれ方なのかも知れない。そこは理解しつつなのだが、私はどうにも愚直に本書で自己変革をしようとは思えない。

本書を読む目的によっては確かに役立つ内容であり、機能的に役立つという以上に、読者自身の心の支えになるであろう。これはこれで理解するのだが、社会生活を営むうえで、このスタンスで生きていこうとするのは折り合いをつけにくかろうとも思う。

勿論、建前として完璧を心がけますという顔をしながら内心「まぁええか」の精神で生きていくという器用さも求められるのではなかろうか。さすがに著者が想定している読者層を想像すると、わざわざそこまでのケアをしてくれというのも違う話だろう、と。

しかし、ほぼ最後まで読み(聴き)すすめながら「あー2100円勿体なかったかなー」と思いかけたところに、1つ大きな収穫があった。

何日めのどんなエピソードかはネタバレ防止の観点から略するが、どんな偉業も人間がやったことなのだから、およそこの世に存在するもので自然界になかったものはすべて不完全で欠点だらけの人間が作ったものだ。(中略)、それが人がやったことなのならば、あなたにそれができないという理由はない、、という一節にははたと気付かされた。この一節があっただけで2100円の元は取ったようなものだ。

念押しで申し添えると、本書は不完全さを強要しているわけでもなければ、何かしらの行動変容を促す強さも所謂「やればできる」的に押し通すこともしていない。著者が想定しているかどうかは確証が持てないが、恐らく

許可を求めるな、謝罪せよ

の精神がもっとも著者のスタンスに近いのではないか、と勝手に理解した。これは著者の想定内であるが、一朝一夕に本書で述べられていることを忠実に再現できるとはないだろう。そもそも不完全さの完コピを追い求めるとか不完全の精神と矛盾することこの上ないのだから。