フリーランスのPL PMってどこに転がっているの?
突然ですが、フリーランスのPL PMってどこに転がっているんですかねぇ。「ふ」と素朴な疑問として脳内に湧いてきたのでTwitterでつぶやいてみたのですが、やっぱりモヤモヤと気になるのでこちらにも書いておこうかな、と。
(´・_・`) 「○○ができる」(←○○には何らかの言語やフレームワークが入る)という野良エンジニアはよく見るんだけど、PMやPLができる、という触れ込みの野良エンジニアってどこにいるのだろう?
— 40代独身 (っ◠‿◠ )っ ゃー (正気) (@nullpopopo) June 1, 2016
フリーランスのエンジニア、多分ぱっと思いつく職業はざっとこんな感じじゃないでしょうか。
- プログラマ
- デザイナー
- サーバーエンジニア
ちゃんと統計取ったわけではないのですが、上から書いた順に需要も人口も多いのだと思います。感覚として。フリーランスかどうかにかかわらず、Twitterやっていると、エンジニアは大抵自分のスキルをプロフィールに書いています。また、普段のつぶやき、github、qiitaの書き込みやslideshareにアップロードした資料などでも第三者からスキルを推し量ることもできるでしょう。
反面、プロジェクトマネージャー(PM)、プロジェクトリーダー(PL)をメインスキルとしている、もっと正確に言うと、肩書としてのPL/PMではなく、現在進行形で何らかのプロジェクトにおいてPLやPMの役割を担っていたり、またはPLやPMのスキルを売りとしてフリーランスやっている人って、中々表に出てこないなー、と。
勿論、フリーランス向けの案件サイトを見ると、PLやPMができる人を募集かけていたりするので、需要はあるしできる人もいるのでしょう。しかし、大抵においてこういうプロジェクトは、ある程度の資金力を持ったプロダクトオーナーやプロジェクトオーナー(以下まとめてオーナーと書きます)がいて、SIerやエージェントに声を掛けて募集するのが一般的です。知り合いから引っ張ってくるとか、あんまり聞かないですよね?
■ なんでフリーランスのPL PMが必要なの?
なんでこんなことを言い出したか、と言いますと、フリーランスばかり集めたプロジェクト、上手く回っていますか?という投げかけです。
なんでフリーのPL PMの話をし出したかっていうと、単純に「このプロジェクトをどうにかしたみある」という状況において、顧客やプロパーから適任者をアサインできなかったらこれ即詰みじゃね?と思ったのです。
— 40代独身 (っ◠‿◠ )っ ゃー (正気) (@nullpopopo) June 1, 2016
会社としてある程度の規模があって、社員としてあるプロダクトにコミットするのであれば、メンバー全員ある程度のモチベーションと主体性を期待することができます。建前ですが。
エンジニアを全員外注する場合でも、オーナーがプロダクトをある程度形にできている場合、つまりオーナーがコード書いてディレクションもして、だけど部分的に手伝ってもらいたいなどの、いわゆるジョブディスクリプションができているケースの場合は、必然的にオーナーがリーダーとなるでしょう。これはもう生みの親ですし適性も熱意も問題ないケースです。
しかし、こんな条件の場合、なかなかPLやPMをやる人を集めるのはかなりしんどいです。
- プロジェクトの規模が5人以下(の予算しか組めない)
- オーナーは非技術者
- 一応集まったエンジニアの出自がバラバラ
- エンジニアはみんな実装向き
こうしたケースは、本来オーナーがきちんとマネジメントしてリーダーシップを発揮するべきなのですが、これができていないと、確実にプロジェクトは失敗します。例え表面上問題がおきていなくても、何かしらの綻びがキッカケで一気に致命傷になりかねません。勿論、オーナー以外全員外注エンジニアのプロジェクトがすべからく失敗すると言っているのではありませんが、メンバー全員が一枚岩ではないですし、誰かが実装の音頭を取ってくれるだろう、という期待をするのは楽観的すぎです。
人月の神話でフレデリック・ブルックスはこう書いています。
遅れているソフトウェア・プロジェクトに人員を投入しても、そのプロジェクトをさらに遅らせるだけである。
いわゆるブルックスの法則として有名ですね。しかしこれ、現在進行形で開発中のプロジェクトだけでなく、すでに運用に乗っているプロジェクトに当てはまらないかといえば、これもそうとは言い切れないと思っています。言い換えると、これはプロジェクトの遅れ、ではなく現在進行形のプロダクトの緩やかな死を加速するのではないかという言い方もできます。
例えばオーナーだけがプロパーで外注のフロントエンドエンジニア、バックエンドプログラマ(兼DBエンジニア)、サーバー管理者という布陣だとして、レポートラインは常にオーナーとメンバーの1対1だとしましょう。一見して綺麗に役割分担できているように見えますが、相互に及ぼす影響というものが見えなくなってしまいます。そしてこれは何かしらの問題が生じたときに全体を俯瞰するメンバーが1人もないということを意味します。
オーナーは本来、プロジェクト全体を統括する立場ですが、ビジネス上の判断はできたとしても、技術的な判断ができるとは限りません。なので、すでに運用中のプロジェクトで何かしらの問題が生じた場合、もしメンバーを増やすのであれば、当座の問題に直面しているエンジニアのコピーロボットを作るのは悪手です。技術のわかるリーダーを連れて来ないと軌道修正は厳しいでしょう。これにはちゃんとした理由があります。
- 既存のメンバーは大抵自己のアウトプットにしか興味が無い
- 品質や納期などはオーナーとしか調整しない
こんな状態に陥っているプロジェクトに、追加要員をメンバーとして参画させても混乱の増幅しか招きません。なので、リーダーを連れて来るべきなのです。そして、オーナーはリーダーをプロジェクトにアサインしたら最初にするべきことは次の4つです。
- リーダー招聘の理由説明とともに、オーナーがこれまで持っていた権限をリーダーに移譲した、という宣言をメンバー全員に(できれば同時に対面で)する
- リーダーはメンバー全員に対して平等に接することを宣言する
- すべての作業はリーダーが承認してから行うようルールづけする
- すべてのチケットは全員が平等に見えるようにする
4つ書きましたが目的は1つで、今までのやり方では上手くいかなかったという危機感の共有です。もっと踏み込んだ言い方をすると、この時点でオーナーはマネジメントの敗北、リーダーシップの喪失を意味します。しかし、オーナーにとってすべての希望が絶たれたわけではありません。少なくとも、ユーザーがいてそれなりに収益を上げているのであれば、まだプロダクトの秩序を取り戻すチャンスが残されています。
■ フリーランスが集まるプロジェクトのリーダーシップとは
さて、リーダーは着任して最初に何をすべきか、これはたった1つです。
コードを書く(実装する)以外のすべての面倒ごとをメンバーから巻き取る
オーナーから招聘されたリーダーは、プロジェクトに着任する瞬間まではほぼオーナー主観の情報しか与えられていません。目の前の課題という事実はすべて、オーナーのフィルターがかかっているというスタンスで、同じことを根気よくメンバーからヒアリングしましょう。勿論、最初からメンバーが協力してくれるものと思ってはいけません。なぜならメンバーから見たリーダーは「オーナーの利益のために雇われた」というフィルターで見られているからです。そして、既存メンバーは着任したばかりのリーダーが知らない情報を山のように持っているのです。なので、リーダーはメンバーに対して最大限の敬意を持って接しなければなりません。どんなに既存メンバーが書いたコードがクソであっても、です。
これが失敗すると、単にオーナーの仕事を丸投げしただけの雇われ店長みたいなリーダーが1人増えただけで、いよいよメンバー全員の不幸が加速するしかなく、プロジェクトは崩壊します。オーナーはメンバーそれぞれに良くも悪くも言いたいことがあって、反面、メンバーもオーナーへ言いたくても言えないことがあるものです。また、もっと目に見えないのはメンバー間がお互いに持っている不満です。これを上手く吸収して着地点を求めるのがリーダーの仕事です。なので、オーナーは最高の待遇をもってリーダーを迎えなければなりませんし、それが出来ないのであれば、そんなサービスやめてしまえとしか言えません。
もっともこれはリーダーシップの一般論というか理想論でもあるのですが、烏合の衆をまとめる、しかも後から参画したリーダーはキャリアの積み上げでリーダーになる以上にリーダーシップが要求されるのではないでしょうか。
■ で、フリーランスのPM PLってどこに転がっているの?
やっと本題です(笑)。まず最初にわいた疑問なんですが
エンジニアでフリーになる人、食っていけてる人に限っていえば何らかの偏りはあっても戦力として見られている感はあるけど、フリーのPM PLが表だって出てこないのは、ネガティブな理由しか思い浮かばない・・・
— 40代独身 (っ◠‿◠ )っ ゃー (正気) (@nullpopopo) June 1, 2016
所謂斧を投げるタイプのフリーランスエンジニア、人として多少癖はあっても猛獣使いがいれば活躍する場があります。しかし、この猛獣使いが野に放たれる、というのはこれ即ちライオンに噛まれたくらいのトラブルおこしたと世間はみなしているのではないかと勝手に仮説を立ててみました。
また、PM PLとして与えられたミッションをこなせる人は会社が手放さず大切にされる、という建前ですし、いよいよ待遇が追いつかないのであれば、同業他社に転職かコンサルティングファームを立ち上げるか、の選択肢なのでは?とこれもまた勝手に想像しています。そうじゃなければ、そもそも向いてない的な。
PL PMをメインスキルとする人は会社でそれなりに上手く立ちまわっているので表に出てこないか、そうじゃなかったらそもそも向いてないか、の両極端に見られてそう。
— 40代独身 (っ◠‿◠ )っ ゃー (正気) (@nullpopopo) June 1, 2016
エンジニアであれば、自分のスキルを客観的に評価してもらえる環境が揃っていますが、PM PLって人相手のスキルなので評価がどうしても主観的になってしまいます。ここで言う評価、というのは顧客から見た評価、自己評価、そして営業から見た評価という3つの軸があるので、さらに定量的な評価が困難であるとも思っています。また、エンジニア以上に深く顧客の課題へのコミットを求められる性格上、なかなか表だってキャリアを公開できない事情もあるでしょう。これが「フリーランスのPM PLが表に出てこない」原因なのかなぁ、と。
なので、現実問題として、フリーランスの烏合の衆プロジェクトでは次のようにしてリーダーを立てるのが現実的ではないでしょうか。
- 最初から誰かをリーダーに任命する
- ある程度プロジェクトが進むまでナアナアで進めていた場合、適任者を推薦する
このいずれかが上手くいかないか、それが予想される場合にはじめて外から連れてくる、という選択肢になるかと。で、野良のPM PLってどこに転がっているんですかーっ!><