[書評] 会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする?――小さな事件からITセキュリティまで警察への依頼の仕方 海老谷 成臣 (著), 林 秀人 (著)

[書評] 会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする?――小さな事件からITセキュリティまで警察への依頼の仕方 海老谷 成臣 (著), 林 秀人 (著)

技術評論社の池本さんより

自分でいうのもなんですが、既存のビジネス書に飽き足らない皆さんにお勧めします。まさに企業経営にかかわる方に超お勧めです。人事・総務・労務の方々への賛歌であり、救いの一冊になります。

とご紹介いただき、早速読ませていただきました。ありがとうございます。Amazonのリンクはこちら

どのような方におすすめか?

たしかに、日々内外のリスクと相対している人事・総務・労務の方々の一助になるであろうテーマなのですが、むしろ BtoC ビジネスや BtoB ビジネスであっても、多様性を持った人々と接する最前線の方々にこそ刺さる一冊かなーと。

全体的な感想

全体的な建て付けとして、章がすすむにつれて専門的なテーマになっていますが、なるほどこれは技術評論社が扱うにふさわしいテーマだなーと。その理由については後述します。会社や社員が犯罪に巻き込まれるだなんて、まるで繁華街の細い雑居ビルにあるような治安の悪い会社くらいやろ、という先入観を持って読み始めたのですけれども、内部統制やマーケティングにかかわる人にも有用なTIPSが散りばめられています。

直接的な面倒ごとの対処方法は勿論のこと、レピュテーションリスクにどう対処するかの入口 入門編としても活用できますし、これから総務部門を拡充しなければ、というフェーズの企業経営者にとっても、社員に「なぜ問題対処の仕組みをあらかじめ作ったほうがよいのか」を理解してもらうのにも活用できそうです。

各章の感想

第1章 会社や社員が犯罪に巻き込まれちゃった編 では「(一般的なケースでは)迷うことなく、とにかく110番しなさい」が前面に押し出されていて、多少なりとも法律知識があったり、ある程度リスク対策のしっかりした企業にとっては「できて当たり前」な内容から入っていたのだけれども、仮に自分が何の権限も持たず判断基準を知らされていない一般社員だったらどうするか、という立場で読んでみると、これは人事・総務・労務の方々がどんな頑張りをしているかを他部署の人たちが知るいい機会になるのだろうという感想。むしろ、これだけ丁寧に1章を割いているということは、それだけ「仕組み」が備わっている会社がむしろ少数派なのかも知れないですね。

第2章 反社がいきなりやってきた編 第3章 社員が悪いことしちゃった編 第3章 社員が悪いことしちゃった編 はまさに総務向けの内容ですが、例えば厄介なお客さまが来社されちゃったりとか、社員どうしの喧嘩や一方的な暴力だとか、その場の責任者が初動にあたらざるを得ないことも往々にしてあるわけで、そうした現場の最前線に立つ人たちにこそ刺さる内容かなー、と。もちろん、社内の治安は良いに越したことはないですが。

第5章 警察から問合せが来ちゃった編 と第6章 サイバー犯罪編 はISPなどでabuse対応されている方だけでなく、一般的な企業のシステム管理者にこそ読んで欲しい内容です。扱うテーマの幅広さとページ数からして仕方ないのですが、どうしても犯罪手口の触りの部分を取り上げている都合上、細部に至るまでのマニュアルになっているというよりは、サイバー犯罪の全体的なトレンドとその一般的な対策にとどまっているのは仕方ないのですが、それでも20年くらい前の感覚で境界防御さえしていれば大丈夫だくらいに思っているおっさんに考えを改めてもらうキッカケにはなるのかも知れないですね。

第7章 警察組織って何? については、そもそも今まで警察と接点がなかった 馴染みのなかった人向けに一般論としての警察組織についての知識と「警察官だって人間だー」的なややほっこりする愚痴も。なので、単純に読み物として楽しむ章かと。

読後感 – 読み始める前の先入観はどうなった?

私みたいに非機能要件で飯食ってる人間にしてみたら「知ってるよそんなこと」「まあ当たり前の考えだよね」という先入観を持って読み始めてみたものの、それでも「そういう考えもあるのかー」「こんな対処方法は目から鱗だ」と思うこともありましたし、個々の事例の納得感よりも「例外対応 犯罪(に至らないものも含む)対応が文書化 仕組み化されてる企業ってもしかして少数派なのでは?」という危機感に似た読後感でした。

それ以上に、いざコトに当たるときの心構えを読んでいると、いわゆる「情報」そして「戦略」を扱うヒントがいくつもあって、あーこれは技術評論社から世に出るわけだわー、という納得感をもって読み終えました。よくYoutubeで丸山ゴンザレスやバン仲村の動画を見ているようなビジネスパーソンには勿論、性善説しか知らない坊っちゃん嬢ちゃんが世間を知るキッカケとしてもおすすめできる一冊ではないでしょうか。

危機管理だいじって誰もが反対しないテーマだけれども、いざコトが起こったときに慌てず騒がず初動にあたることができるのは、仕組みがあってこそだという認識を新たにできました。知っているのとできるのとは違いますし、知っていたところで何もできずに後から「知ってたよそんなこと」って言うの、クソほどカッコ悪いですよね?

以上です。